
面接で評価されるのは「精度の高さ」ではなく、「意思決定を動かす説明力」です。
10分のライトニングトーク(LT)で、結論→根拠→打ち手を一貫したストーリーで語れれば、未経験でも十分に刺さります。
本ガイドは、未経験〜初学者が週10時間×1〜2週で「テーマ選定→スライド構成→図の作り方→口頭台本→Q&A対策→練習→当日の振る舞い」まで仕上げるための“現場の型”をまとめました。
コピペOKの台本テンプレ/チェックリスト/自己採点ルーブリック付きです。
この記事で身につく力
- 10分LTを結論先出しで設計する力
- 図1枚で状況把握→次の打ち手へ橋渡しする力
- READMEと1コマンドで再現性を語る力
よくある失敗と、面接で刺さらない理由
面接側として多数の10分発表を見てきましたが、刺さらない発表は次の特徴があります。
- 結論が最後:前置きで時間切れ。示唆が伝わらない。
- 技術の羅列:AUCやハイパーパラメータの説明会になってしまう。
- 再現性が見えない:Notebook一枚では翌月/他者が回せる像が伝わらない。
対策はシンプルです。「10分=意思決定を動かす提案」と定義し、結論先出し→根拠の最小セット→打ち手で統一する。再現性はREADMEと1コマンドで語る。これだけで評価が一段上がります。
実体験からのコツ(評価者目線)
私が評価者として刺さった発表は例外なく、(1)冒頭30秒で結論、(2)図1枚で状況把握、(3)打ち手の選択肢が明確でした。
ある応募者は売上低下の要因を「来店数減」と一刀両断し、ABテストで+2ptの改善見込みを示しました。
技術詳細は最小限。この構成だけで説得力が跳ね上がります。
“刺さる10分LT”テンプレ(コピペ可)
下記は8〜10枚で完結するスライド構成です。色は2〜3色+強調1色、図はMatplotlib基調で統一(納品向き)。
- タイトル(30秒):案件名/役割/期間/一言結論
- 目的・読み手(60秒):誰が何を決める?KPIと粒度
- データ・前提(60秒):表構成/期間/除外/粒度/欠損方針
- 全体トレンド図(90秒):月次売上の折れ線+注釈
- 分解図(60秒):上位店舗の横棒/カテゴリ構成比
- (MLあり)評価(90秒):CV±std/Top-k/閾値/コスト
- 打ち手(60秒):A/B案と期待インパクト(定量)
- 再現性(60秒):README/コマンド/DB/CI
- まとめ(30秒):結論3行/Next Action
- Q&A(60秒):想定問答へ誘導
タイトル文例(コピペ)
「月次×店舗の売上トレンドと重点施策提案」
結論:4-7月のYoY -12%は来店数要因。次月は在庫調整A/Bで+2ptを見込む。“結論3行”テンプレ(コピペ)
1) 4〜7月のYoY -12%(来店数要因)。
2) 新商品X導入後、カテゴリYの粗利率 +2.1pt。
3) 次月:在庫A/Bテスト(期待+2pt)を提案。図の作り方(現場の型)
- 図1(大):月次折れ線+注釈(キャンペーン/障害)。軸は
YYYY-MM、単位明記 - 図2(小):上位10店舗の横棒(1位を上、数値は桁区切り)
- 図3(小):100%積み上げ(カテゴリ構成比)
最小構成は 折れ線+横棒+100%積み上げ。色は2〜3色+強調1色で統一。
詳細は>>【保存版】可視化入門:Matplotlib/Plotlyの使い分けと“伝わるグラフ設計”10ステップ
はじめての人向け:最小コード例(Matplotlib)
目的:面接で“伝わる”図をすばやく作る。コードはシンプル最優先。
前準備
# 必要ライブラリの準備
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
# 図の日本語フォント設定(環境に応じて変更)
plt.rcParams['font.family'] = 'IPAGothic' # or 'Noto Sans CJK JP'
plt.rcParams['axes.grid'] = True
図1:月次トレンド(注釈付き)
# ダミーデータ
df = pd.DataFrame({
'month': pd.date_range('2024-01-01', periods=12, freq='MS'),
'sales': [120,130,125,110,105,112,118,121,119,123,128,131]
})
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8,4))
ax.plot(df['month'], df['sales'], color='#2563eb', label='売上')
# 重要イベントに注釈
ax.annotate('新商品X導入', xy=(pd.Timestamp('2024-06-01'),112),
xytext=(pd.Timestamp('2024-03-01'),135),
arrowprops=dict(arrowstyle='->', color='gray'))
ax.set_title('月次売上トレンド(YYYY-MM)')
ax.set_xlabel('月'); ax.set_ylabel('売上(万円)')
ax.legend(); fig.tight_layout(); plt.show()
ここで伝えたいこと:上下の“変化点”と“要因”を1枚で把握できること。
図2:上位10店舗(横棒)
stores = pd.DataFrame({
'store': [f'S{i:02d}' for i in range(1,11)],
'sales': [320,300,290,275,260,255,240,230,225,220]
}).sort_values('sales') # 横棒は小→大で描くと見やすい
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6,4))
ax.barh(stores['store'], stores['sales'], color='#10b981')
ax.set_title('上位10店舗の売上')
ax.set_xlabel('売上(万円)')
for i, v in enumerate(stores['sales']):
ax.text(v+3, i, f'{v:,}', va='center') # 桁区切りで数値表示
fig.tight_layout(); plt.show()
ここで伝えたいこと:重点店舗が一目で分かる。
図3:カテゴリ構成比(100%積み上げ)
mix = pd.DataFrame({
'month': ['2024-06','2024-07','2024-08'],
'A': [0.30,0.28,0.35],
'B': [0.45,0.47,0.40],
'C': [0.25,0.25,0.25],
}).set_index('month')
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6,4))
bottom = 0
colors = ['#60a5fa','#fbbf24','#f87171']
for (cat, color) in zip(mix.columns, colors):
ax.bar(mix.index, mix[cat], bottom=bottom, label=cat, color=color)
bottom += mix[cat]
ax.set_title('カテゴリ構成比(100%積み上げ)')
ax.set_ylabel('構成比')
ax.legend(ncol=3, bbox_to_anchor=(0.5,-0.15), loc='upper center')
fig.tight_layout(); plt.show()
ここで伝えたいこと:構成の変化が、結論(たとえば来店数要因・商品構成の影響)と整合しているか。
話す内容(0:00〜10:00の台本)
0:00-0:30「本日の結論を先に。YoY -12%。来店数が主要因。次月は在庫A/Bで改善提案。」
0:30-1:30「目的は店舗Mgrの重点施策決定。KPIは売上/構成比。粒度は月次×店舗×カテゴリ。」
1:30-2:30「データはsales/stores(粒度・除外・期間)。欠損/重複は事前に処理。」
2:30-4:00「全体トレンド図。4月に落ち込み、6月で持ち直し。イベント注釈を配置。」
4:00-5:00「分解:上位10店舗、カテゴリ構成比。」
5:00-6:30「(MLあり)CV±stdとTop-k/閾値/コスト。意思決定のしきい値はYouden/コスト最小。」
6:30-7:30「打ち手A/Bと期待インパクト。モニタリング指標。」
7:30-8:30「再現性:README/1コマンド/SQLite/CI。引き継ぎ可。」
8:30-9:30「まとめ3行。リスク/代替案を一言。」
9:30-10:00「Q&Aへ。まずよくある質問に先回り回答。」
ストーリー設計:6ステップで流れを組む
発表も記事も、下記の6ステップで組むとブレません。(一般的に知られるフレームワークを現場向けに調整)
- Problem(課題):何が問題かを数値で定義
- Context(背景):読み手に刺さる現場視点
- Solution(解決):具体的な打ち手(A/B案)
- Offer(提案価値):再現性・引き継ぎ(README/コマンド/CI)
- Focus(焦点化):対象の絞り込み(上位店舗・ターゲット顧客)
- Action(次の一歩):検証計画とスケジュール
詳細は>>【保存版】データレポート納品の型:要件定義→ETL→検証→可視化→Excel/PDF→引き継ぎまで、失注しないワークフロー完全版
資料・発表のレビューを“伴走”で
独学でも可能ですが、スライド設計/話し方/再現性にレビューが入ると説得力は段違い。
6ヶ月ロードマップのポートフォリオに直結させるなら、下記2校の無料カウンセリングから始めるのが近道です。
TechAcademy データサイエンスコース(受講料:174,600円~ ※更に割引あり)

株式会社キカガク AI人材長期育成コース(受講料:237,600円~)

読者タイプ別の発表戦略(3パターン)
- 社会人(キャリアチェンジ/転職):ML評価を入れる。
CV±std / Top-k / 閾値 / CIを一枚に集約。
>>【保存版】モデル評価:指標の選び方・交差検証・閾値最適化・ビジネス接続を“実務の型”で解説
>>【保存版】ハイパーパラメータ入門:Grid/Random/Optunaの実務チューニング完全ガイド - 副業(稼ぎたい):Excel納品/自動化の一連を強調。
run_all.py→Excel→PDF→README→タグ/リリース。
>>【保存版】データレポート納品の型:要件定義→ETL→検証→可視化→Excel/PDF→引き継ぎまで、失注しないワークフロー完全版
>>【保存版】SQLite×Pythonで作る“ローカルDWH”——ETL・集計・レポート自動化の最短手順
>>【保存版】Git/GitHub入門:バージョン管理・ブランチ戦略・レビュー・自動化を“実務の型”で最短習得 - 在宅(家事・育児と両立):短時間×高頻度で回る運用を示す。
15/30/60分メニューとスケジューラを図解。
>>【保存版】在宅×Python:子育てと両立する“1日1時間学習術”忙しくても伸びる最短メニューと運用の型
7日間で仕上げるプラン(1日60分×7)
Day1:テーマ確定→結論3行を先に書く
Day2:データ/前提スライド(粒度・期間・除外・欠損)
Day3:図1(トレンド)
Day4:図2・図3(分解)
Day5:(MLあり)CV±std/Top-k/閾値/コストの表
Day6:打ち手A/B・再現性スライド
Day7:通し練習×2(録音→自己採点→修正)
練習チェックリスト(コピペ可)
- 10:00以内(目標9:30)
- 冒頭30秒で結論
- 図は3点に絞る
- “えっと”は3回以内
- Q&A想定10問に即答
- スクリプト/デモは1コマンドで再現
Q&A台本(想定問答10)
- なぜこのテーマ?→ 誰の意思決定を支援?代替案との比較。
- KPIの定義は?→ 分母/除外/粒度を一文で。Notes/README参照。
- モデル選択の根拠は?→ ベースライン→軽量探索→絞り込み。再現性と説明可能性。
- 評価は十分?→ CV±std、Top-k、閾値、コスト、CI。
- データ品質は?→ 欠損/重複/異常値と対処(検査コードあり)。
- 再現性は?→ README/
requirements.txt/CI/タグv0.1.0。 - 運用想定は?→
run_all.py、スケジューラ、エラーログ。 - リスクと代替案は?→ データ遅延、季節性、閾値調整、簡易ルールベース。
- 一番の学びは?→ 意思決定の前に評価設計。
- 協働はどう進める?→ Issue/PR/レビュー運用。
失敗パターンと回避策
- スライドが多すぎ:10枚超は冗長。8〜10枚に圧縮。
- 色が多い:ブランド色+強調1色で十分。
- 読み上げ:テキストは削り、図とキーワードに。
- デモ事故:録画GIF/PNGを用意。ライブは1コマンドのみ。
- 時間超過:9:30で終える練習。ラスト1分はまとめ→Q&A誘導。
付録A:スライド雛形(見出し文例)
- タイトル:「月次×店舗の売上トレンドと施策提案」
- 目的:「店舗Mgrが翌月の重点施策を決めるために」
- データ:「sales/stores(YYYY-MM、除外:社販/欠品)」
- 図1:「トレンドと注釈」
- 図2:「上位10店舗(横棒)」
- 図3:「カテゴリ構成比(100%積み上げ)」
- 評価:「CV±std/Top-k/閾値/コスト」
- 打ち手:「在庫A/Bと期待インパクト」
- 再現性:「README/1コマンド/SQLite/CI」
- まとめ:「結論3行/Next Action」
付録B:自己採点ルーブリック(100点)
- 結論先出し 20点
- 図の説得力 20点
- 評価設計 20点
- 打ち手の具体性 15点
- 再現性 15点
- 時間厳守/話し方 10点
付録C:緊張対策の最小セット
- 3回通し練習(録音→1つだけ改善)
- 息を吐く→ゆっくり話す→相手を見る
- PC再起動/通知OFF/ケーブル確認(オンライン面接は回線/マイクも)
この記事から次に読むべきもの(内部リンク)
[内部リンク:ポートフォリオ完全ガイド]/[内部リンク:データレポート納品の型]/[内部リンク:可視化入門]/[内部リンク:モデル評価]/[内部リンク:Jupyter Notebookの基本]
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